想像力の扉


空を見上げていて、「あの雲、何かの形に似ているな」そう思うことが、小さい頃からよくあった。
今も、雲を見るのは大好きで、写真にも撮っている。
いつの間にか「空の写真家」と言われるようになった。


人は雲を見て、それが何かの形に見えると感じた時、日々の情報の嵐の日常を一瞬離れ、
その人の中にある想像力のスイッチをオンにしたんだと思う。
誰かがこう言ってたからとか、何かにこう書いてあったからではなく、ただ素直にストレートに
心が反応するんだと思う。
何に見えるか、何を感じるかは人それぞれだが、その人自身の心から出てきた思いだと思う。


きれいだとか、楽しいとか、すごいとかの感情は、誰かに教えて貰うものではなくて、
既に自分の中にある感情と、目の前にある何かが出会って、心が反応するものだ。


渦巻く情報の嵐、日々更新される情報。
様々な情報や知識で鎧をまとった心。
そんな心が空を見上げ、一つの雲に目がとまり、想像力のスイッチをオンにする。
あ、あの雲はイルカだとか・・・その思いは心のずっと奥に潜んでいたその人ならではの
想像力だ。
その想像力を解き放つ時、人は気持ちいい。


僕は写真を撮る。
僕がうまく撮れたと思う写真は、僕の想像力のスイッチをオンにする。

もう一度その場所に連れて行ってくれる
地平線の向こうにある何かを想像する
道の先に見えない町を思う
海を見る人の背中にその人の気持ちを思う


僕にとって優れた写真とは、何かに見える雲のようなもの。
その場所に行ったことがないのに、知っているような気がする。
その場所に立ったことがあるような気がする。
風を、音を、においを、記憶を、物語を、写っていない何かを想像させてくれる。


見るものの想像力を解き放つ。
それが写真の面白さだと思う。
想像力のスイッチを押す。
今はそれが僕の仕事だと思っている。



2007年7月14日

HABU