銀塩主義


銀塩というのは、デジタルに対するフィルム全般のことをいいます。
僕は写真を始めた時から今に至るまで、リバーサルフィルムにこだわっています。
リバーサルフィルムとはスライド映写等で使う透過フィルムで、ネガとは逆のタイプのものです。
このフィルムは発色にすぐれ、また印刷原稿としても適しています。


雲を主要な被写体とする僕にとって、諧調・グラデーションは最も重要なポイント。
白い雲の中に、何種類もの白があって、その微妙な色の差が雲のモコモコした感じを表現します。
夕焼けも好きな被写体ですが、赤・黄・オレンジ・青・グレーなど、様々な色が少しずつ
変化して溶け合っている。
これらの色の諧調、グラデーションをそのまま写し取れるのは、リバーサルフィルム以外ないといえます。


リバーサルフィルムはこのように微妙な色の再現に適していますが、カメラの露出設定(明るさの設定)に
非常にシビアに反応します。
適正な露出値というのがあって、うまくあたればいい色が出ます。
露出値を少し間違えただけで、真っ白になったり真っ暗になったりします。
ネガの場合はプリントを作る時にかなり補正がききますが、リバーサルはそうはいきません。
撮った時の設定、その通りに写ります。
そこで慣れないうちは、カメラ内蔵の露出計が示す値に対して、+ ー の補正を加えます。
同じカットを何枚露出を変えて撮るか、ここからは慣れによって決まってきます。
通常は + ー ノーマルの3枚ですが、僕は大抵2枚です。
カメラによって補正値は2分の1であったり、3分の1であったりするのですが、
NIKON F3は3分の1のステップなので、僕はノーマルと+3分の2、
またはノーマルとー3分の2と、光の状況によって選ぶことにしています。


フィルムは持ち運んでいる本数に限りがあります。
だから失敗したくない。
そこで被写体を良く吟味し、過去の失敗を思い出し、構図や露出を考えてシャッターを切る。
とにかく集中力が重要。


気合いを込めて、今の一瞬を封じ込める。
「写れ!」
もたもたしていたら、雲はすぐに形を変えてしまう。
一瞬の出会い。
今を形に残すのは、撮る瞬間ですべてが決まるリバーサル以外ない。
緊張感と心構えが違うと思うのです。


失敗したとしても、その場でチェックなど出来ない。
後日、現像が上がり、その時初めて成功失敗を知る。
いい加減に撮ったものは、失敗している。
二度と失敗したくないので、なぜ失敗したか考え、同じ間違えをしないようにする。
そこで経験値が増えていき、写真が上達していきます。


僕のフィルム消費量は、少ない方です。一日2〜3本。
2ヶ月の旅で約100本。
昔からの習慣で、無駄な写真は撮らない。
だからいつも集中力を大切にして、内容の濃い旅にしたいと思っています。


三脚は使うに越したことはありません。
三脚を使って、なるべく小さい絞りを選びます。
11とか16とか22とか、光の通過する穴を小さくする。
その分、シャッタースピードが遅くなるので、ブレないようにするわけです。
これにより手前から奥まで、ピントの合った写真が出来ます。
余程明るい時以外は、三脚または何らかのブレ対策をします。
三脚はよく重い方がいいと写真の本に書いてありますが、運ぶのが大変。
旅に連れて行くのは一苦労なので、僕はカーボンの軽いものを使います。
押さえ込んでガタガタいわなければ、使えます。


写真のセレクトも大切な時間です。
現像済みのスリープをルーペで見ながら、気に入ったものにははさみを入れ、マウントする。
それをスライドプロジェクターでスクリーンに大きく映す。
大きな画面で見ると迫力もあるし、隅から隅までチェック出来るのです。


撮ったあの場所にいるような臨場感。
あの時の感動が写っているか。
それが選ぶ基準になります。


僕は写真を始めた時から、この方法でセレクトをしている。
写真集や写真展などに使う写真で悩んだ時は、必ず大きく映写して比べてみることにしています。


リバーサルは現像し、マウントした状態で完成です。
それが作品であり、そのまま印刷原稿となるのです。
プリントは写真展などで必要な時以外、作りません。


今は選び抜いたものは、スキャンしてパソコンに入れます。
パソコン上で、写真集や写真展の構成などを考えたり、ホームページなどで公開もします。


友達や子供の写真など、人にあげたりする可能性のある写真は、以前はネガフィルムで撮っていましたが、
失敗したカットまで現像され、無駄が非常に多く、膨大な量になってしまいます。
その点リバーサルは、選び抜いた写真だけをプリントしたり、データとして残したりするので、
レベルの高いフォトストックが出来ると思います。


とりあえず、FUJIFILMのベルピア100や、KODAKの100VSあたりの発色が派手なフィルムを
使ってみて下さい。


(このVOICEは2007年3月24日のトークショーの一部を文章化しました)



2007年4月1日

HABU