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なんとかなる
「何とかなる 何とかならなかったことは 今まで一度もないから」
この言葉は写真集「あの夏」にも書いた、僕の座右の銘です。 オーストラリアのとんでもない僻地で、車が砂にはまって脱出不可能は2回。 エンジン故障も2回。 水と食料だけは積んであるので、まぁ、何とかなるだろうと気持ちを切り替え 空でも眺めだすと、不思議と車が通りかかって助けてくれるものです。 オーストラリアは開拓の歴史があるので、そういった助け合いが常識です。 灼熱の世界、放っておけば死ぬ。みんながそれを意識しています。 バリ島ではバイクのひったくりに、全財産が入ったバッグ。 現金・パスポート・カード・航空券、やられました。 さすがに落ち込みましたが、警察で盗難届を作ってもらっている間、あまりに のんびりしたポリス達とそのコミカルな会話に、怒ったり落ち込んだりしている 自分がばかばかしくなり、なんだか笑いたくなってきました。 泣きっ面に蜂。警察から宿に帰る道で、土砂降りの雨に降られました。 びしょ濡れです。その雨に打たれながら考えました。 この旅は最悪だと考えれば、残りの何日かは暗い無駄な時間になる。 何とかなる、と思うことにしよう。 宿の主人は気の毒がって、それまでの宿泊費をただにしてくれました。 何人もの友人が、家に泊まってくれと言ってくれました。 みんながご飯をおごってくれました。 エアチケットもパスポートもカードも、スムーズに再発行されました。 その後、帰国までの2週間、人々の温かい心に助けられ、かえっていい経験を したなと思いました。 心の中のスイッチ一つで、世界はまるで違うものになる、ということを実感しました。 「雲を追いかけて」の見開きのページに、ダートロードの一本道を車が一台先を走っていく 写真があります。 車に乗っている老夫婦は、砂にはまった僕の車を見て「ちょっと待ってろ」と言って、 何十キロもある道を自宅に戻り、牽引用のロープを持って来てくれました。 なんとか脱出した後、僕の職業を知って面白いところへ連れて行ってやると、これまたひどい 道をあちこち案内してくれました。 旅に出るといつも何人かの天使に出会うと、よく一緒に旅をする友人のロバート・ハリスは 言います。 彼はそんな天使達のために、記念に渡す特別な小さなコインをいくつも持ち歩いています。 その老夫婦に会った時、ああこの人達はまさしくこの旅での僕の天使だな、と思いました。 今日写真展の準備をしながら、ふと彼らに出来上がった写真集を送ってなかったことを思い出し、 彼らの車が写っているポストカードと、一緒に撮った記念写真を添えて送ることにしました。 人に迷惑をかける無謀な旅は、何とかならないかもしれないけど、思いがけない事故やトラブルは まじめに向かい合えば、かえって自分の世界を広げてくれるものですね。 冒険しなさい。何とかなるって。 2005年5月27日 HABU |